平家物語巻第十「熊野参詣(くまのさんけい)」です。出家した維盛らは熊野三山を参詣します。
あらすじ
山伏姿となった維盛、与三兵衛重景、石童丸は熊野に参詣します。
岩田川にかかり、本宮(熊野坐神社)に参り、以前父重盛が熊野に参詣したとき(「医師問答」)を思い出し涙します。
翌日、本宮から舟で新宮(熊野速玉神社)に参ります。
寛和2年(987)、花山天皇が位を退いて出家されてお住まいになったという庵の跡には老木の桜が立っていました。
那智ごもりの僧の中に維盛を見知った人がありました。8年前の安元2年(1176)後白河法皇の五十歳のお祝いの際、桜の花をかざして華やかに「青海波(せいがいは)」を舞った昔を思い、 変わり果てた維盛の今の姿に涙をそそられるのでした。
熊野三山
熊野坐(にます)神社(通称本宮)、 熊野速玉大社(通称新宮)、熊野那智神社(通称那智山)の総称。 熊野三所権現とも。現和歌山県熊野地方。
平安時代初期に本宮、新宮を中心に修験道場が開かれ、延喜年間(901-923) 那智山が加えられた。
永宝・応徳年間(1081-97)、本宮の阿弥陀如来、新宮の薬師如来、那智の観音菩薩を一体とする熊野信仰が成立する。
花山法皇、白河上皇をはじめ何人かの上皇の御幸があった。
熊野といえば能「道成寺」で知られる安珍・清姫伝説の舞台としても有名です。
「安珍清姫」←こちらで朗読してます。
イケメンの僧安珍を好きになった清姫という少女が安珍を追っかけまわし、野を超え山を渡り、ついに安珍が寺の釣鐘にかくまわれたところを執念の大蛇となってぐるぐる巻きにして焼き殺すという話です。ひどいストーカーぶりです。
青海波
「青海波」は雅楽の演目で、本来二人で舞うものです。「輪台」を〈序〉、「青海波」を〈破〉として続けて舞います。
垣代(かいしろ)と呼ばれる多数の楽人が舞人の後ろに並ぶのが特徴です。
「源氏物語」紅葉賀で光源氏と頭中将が舞う場面が有名です。漫画「あさきゆめみし」ではズガーンとコマをぶち抜いて大きく描写されてました。維盛もイケメンで光源氏ぽい役柄ですから、ぴったりです。
youtubeに動画がありました↓