平家物語巻第九より「三草勢揃(みくさせいぞろえ)」です。 平家討伐のために出発した範頼、義経軍はそれぞれ摂津国コ陽野(こやの)、 播磨と丹波の境、三草山に陣をとります。
あらすじ
寿永三年(1184)正月二十九日、範頼・義経は、平家を追討し三種の神器を奪還せよとの院宣を受けます。
同二月四日は入道相国の忌日で、福原にいる平家の人々は仏事を営みます。
そのついでに叙位・除目が行われますが、教盛卿は
けふまでも あればあるかの わが身かは 夢の中うちにも 夢を見るかな
(意味)今日まで生きながらえただけでも不思議な我が身であることよ。
このような身で昇進したとて夢の中に夢を見るような、虚しいことだ。
…という歌を詠んで大納言になるのを辞退しました。
平家に従ってきた僧専心は、都にいる梶井の宮から手紙を貰い、涙にむせびます。
人知れず そなたをしのぶ こころをば かたぶく月に たぐえへてぞやる
(意味)人に知られないように、貴方を慕うこの心を、傾く月に託して
お届けします。
維盛卿は、都に残してきた妻子のことを深く心配していました。
源氏は入道相国の忌日に遠慮して、戦闘開始を七日に延期します。
四日のうちに範頼、義経の二手にわけて都を立ち、それぞれ摂津国コ陽野(こやの)、
播磨と丹波の境、三草山に陣をとりました。
朗読について
軍隊の編成を延々と読み上げる「勢揃え」描写が後半に控えます。
長いです。朗読だからまだしも高速ですが琵琶法師はこれにフシをつけ、
「くまぁーーーがいぃぃぃのぉぉぉーーじぃぃろぉぉぉ」とやってたのです。
よく客が怒らなかったなと感心します。
両陣営の空気の違いに注目です。
源氏は平家追討のために着実に、キピキビと動いています。
平家は都を追い落とされたのに仏事を営み、歌を詠んだり、かなりのんびりです。
この緊急事態の中、さめざめと泣いたり、嘆いたり…。
もっとこう…形成を立て直すために前向きに動かんとまずいんじゃないか。
平家の人々には、長くこの世の春を謳歌してきたため、緊急事態を緊急事態と感じるリアリティが麻痺していたのかな…。
そんなことを考えつつ朗読しました。