維盛出家

平家物語巻第十より「維盛出家(これもりの しゅっけ)」です。維盛が熊野で出家します。

平家物語:維盛出家(一) 朗読mp3
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あらすじ

屋島の陣を抜け出し高野入りした維盛は、旧知の滝口入道を頼ります (「横笛」「高野巻」)。

一晩滝口入道の庵室に泊まった翌日、東禅院の智覚上人に出家したい旨を 伝えます。

その際つき従ってきた与三兵衛重景、石童丸の二人に「お前達は 生き延びて誰の家来ともなり維盛の菩提を弔ってくれ」と言います。

しかし与三兵衛重景は父景康から小松家に仕えたよしみを語り どうしても一緒させてほしいと訴えます。

重景の父景康は維盛の父重盛に仕え平治の乱の時討たれました。 重盛は孤児となった景康を実の子維盛と兄弟のように大切に 育て、死ぬ間際に「維盛を頼むぞ」と遺言したのです。

与三兵衛重景は自らもとどりを切り、滝口入道に剃らせました。

維盛をそれを見て髪を下ろしますが、その段になっても都に残し置いた 家族のことが気になっていました。

維盛はとねり武里に屋島の陣への伝言を託します。また、「唐皮」という鎧と「小烏」という 太刀を託します。

とねり武里が「最期のさまを見届けてから屋島の陣へ戻ります」というので 維盛は承知しました。

途中、狩装束した武士七八騎とすれ違います。「もしや追っ手か」と 維盛たちは刀に手をかけましたが、何事もなく通りすぎていきました。

その一団は湯浅七郎兵衛宗光(ゆあさの しちろうびょうえ むねみつ) とその郎党達でした。

湯浅七郎兵衛は維盛に気づき、すでに出家していることに衝撃を 受けたが気遣いをさせまいと敢えて話しかけなかったのです。


祇園精舎」で語られた諸行無常の精神がいよいよ色濃く出てくるあたりです。平家の貴公子でイケメンの維盛が僧に 身をやつし、世をはかなんで入水するのです。

出家しながらも妻子の存在に心惹かれている維盛を平家物語は 「罪ふかけれ」と断じますが、仏教の素養がないと わかりにくい考え方です。

まあ出家するまではいいとして、なぜその直後に入水しないといけないのか? 浄土思想が関係してるのでしょうが、現代の感覚からはピンと来ないところです。


posted by 左大臣光永 | 重衡と維盛