平家物語巻第七より「聖主臨幸(せいしゅりんこう)」です。
平家一門が都落ちする中、宗盛は長年仕えてきた侍たちに暇を出します。
あらすじ
木曾義仲の上洛に際し、平家一門は館を焼き払って都落ちします(「維盛都落」)。
そんな中、源氏でありながら長年平家に仕えてきた畠山重能らの姿が
ありました。
都落ちに際して首を斬られても仕方のないことだったのですが、知盛の
進言で宗盛は彼等に暇を出すことを決めます。
「どこまでも付いていきます」すがる彼等に宗盛は
「汝らの魂は東国にある。抜け殻ばかり連れて行っても仕方がない」と、
泣く泣く暇を出すのでした。
前半はいかめしい漢文調で都が焼け滅ぶ様を描き、後半宗盛主従の
別れの場面となります。
宗盛はデブで無能で臆病で使えない人というイメージがありましたが、
なかなか情に厚いところもあり、憎めないです。
吉川英治氏の「新平家物語」では、宗盛が御座舟の中で子供たちをあやしてる場面があり、
微笑ましかったです。
汝等が魂は、皆東国にこそあるらんに、ぬけがらばかり西国へ
引き具すべき様なし。いそぎ下れ
切ない別れの言葉です。二十年来の思い出が宗盛の頭の中をパァーとかけめぐったことでしょう。
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