還御

平家物語巻第四より「還御(かんぎょ)」です。 安徳天皇の即位に伴い位を退いた高倉天皇は上皇となり厳島に参詣されます。

平家物語:還御(一)朗読mp3
平家物語:還御(二)朗読mp3

あらすじ

治承四年二月、清盛は高倉天皇を強引に位から降ろさせ、自分の息のかかった 安徳天王を即位させました。

高倉天皇は上皇となり、厳島へ参詣されます(「厳島御幸」)。

同二十六日厳島へ到着し、歓迎を受けます。

中心となって節会を行った三井寺の公兼僧正は、

雲井より おちくる滝の しらいとに ちぎりをむすぶ ことぞうれしき
(意味)雲の間から(宮中から)白糸のように落ちてくる滝によって この滝の宮の神と関係を持てるのは嬉しいことだ。

世話役の僧らに位を授け、同二十九日還御(御幸先から都へ戻ること)しますが 風が激しく、ありの浦に留まります。

隆房の少将、

たちかへる なごりもありの 浦なれば 神もめぐみを かくるしら浪
(意味)都へ戻るのも名残惜しい有の浦なので、寄せ来る白波のように 神も私たちに恵みをかけてくださるだろう。「なごり〜あり」と「ありの浦」という地名を、 「めぐみをかくる」と「かくるしらなみ」を懸ける。

夜半、風が静まり酒宴となります。

隆季の大納言、

千とせへん 君がよはひに 藤なみの 松のえだにも かかりぬるかな
先年の齢を保たれる上皇さまの長寿にあやかり、藤の花が松の枝にかかっています。

また、厳島の内侍(巫女)の一人が国綱卿に想いを寄せていたとについて 高倉上皇が話を振ると、ちょうどその内侍から文が届きます。

しらなみの 衣の袖をしぼりつつ きみゆゑにこそ たちもまはれぬ
(意味)白波のような白い袖をしぼり、貴方を想って泣いてます。 貴方のために立って舞うこともできないのです。「たち」は「衣」の縁語の「裁ち」と 「立ち」を懸ける。

国綱卿の返事

おもひやれ 君がおもかげ たつなみの よせくるたびに ぬるるたもとを
(意味)どうか思ってほしい。白波が寄せ来るたびに君の面影を思い出して 涙に袖をぬらす私のことを。

その後、福原を経由して都へ戻られます。

同四月二十二日は新帝(安徳天皇)の即位式が行われます。が、儀式を行うべき大極殿は去年炎上していました。

そういう場合太政官の庁で行うきまりでしたが、時の右大臣藤原兼実(九条殿)の 提言で、紫振殿で行うこととなりました。

平家一門の人々が即位式に参列する中、小松殿(重盛)の公達は 去年重盛が亡くなったので欠席し喪に服していました。


和歌をバンバン詠む優雅な話です。和歌が見せ場です。 話は特別起伏ないです。

前章「厳島御幸」を録音したのは1年近く 前なので、長い間厳島参詣に行って帰ってきたような気分でした。


posted by 左大臣光永 | 平家凋落
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