平家物語巻第五より「文覚荒行(もんがくあらぎょう)」です。
文覚が荒修行する話です。
あらすじ
頼朝は平治の乱に父義朝が加担したことにより伊豆の蛭が小島に流され、二十年の月日を
送っていました。
この頼朝が平家追討に乗り出したのは、高雄の文覚上人の薦めによるものです。
この文覚は、元は遠藤盛遠という武士でしたが、十九歳で出家し、修行に出ます。
修行は過酷なもので、藪の中で裸になって横たわり、虫に喰われるまま八日を過ごしたり、
十二月の雪の降っている時に滝壺に首まで漬かるなどの苦行を続けました。
滝に打たれる修行五日目にして、遂に文覚は息絶えてしまいますが、その時天から童子が
降りてきて、文覚を助け出します。
息を吹き返した文覚に、童子は「大聖不動明王の使い」と名乗ります。
文覚はいよいよ頼もしく思い、修行に精を出し、全国の霊場をまわり、「刃の験者」と呼ばれるに至るのでした。
朗読について
平家物語は時々滅茶苦茶な比喩を使うので、作者がギャグで書いたのか本気なのか、わからなくなります。
「飛ぶ鳥をも祈り落とすほどの…」 (゚ロ゚;)
坊さんが鳥を「祈り落とし」ちゃイカンだろと思いました。
乱暴な中にも情が厚く、憎めない…文覚上人のキャラクターが出るよう朗読しました。
この文覚上人は平家物語の前半と終盤にのみ登場し、狂言回し的な役回りを演じます。
前半では頼朝に院宣を届け、終盤では処刑されそうになった平家の忘れ形見、六代御前を救います。
人形劇平家物語では物語終盤で頼朝と政子の前に文覚があらわれ、声を荒げて罵倒するのが印象的でした。
手塚治虫の「火の鳥乱世編」に登場する文覚は、遠藤盛遠とは別人とされていました。
「破天荒な荒法師」というキャラクター性は、後に「義経記」で武蔵房弁慶に引き継がれたようです(平家物語では弁慶はほとんど活躍しません)。