平家物語巻第五より「文覚被流(もんがく ながされ)」です。
文覚が島流しになります。
平家物語:文覚被流(二) 朗読mp3
あらすじ
前章「勧進帳」から続きます。
文覚が神護寺再興のため院の御所で勧進帳を読み上げたところ、御前では法皇をはじめ貴族たちが琵琶をならし、
今様を歌い、詩歌管弦の遊びをしていました。
そこへ文覚の大声が響いてきたので、場は滅茶苦茶になります。
止めようとした資行判官の烏帽子を文覚はうち落とし、後ろに突き倒し、御前は大騒ぎとなります。
安藤武者右宗との組合いの末、文覚はとりおさえられ、門外に引き出され、禁獄されます。
その後、美福門院(鳥羽天皇の皇后)が亡くなり、文覚は大赦で赦されますが、
相変わらずぶっそうなことを叫び続けたため、ついに島流しとなります。
島へ付き添いの役人が「知人でもあれば土産や食料を貰ってきてください」と
気をきかせると、
文覚はすこぶる横柄な態度で手紙を代筆させ、「清水の観音へ」と宛名を書かせました。
伊勢国阿濃津(あののつ)から舟に乗り、遠江国天竜灘で嵐に襲われます。
船員たちが大慌てする中、文覚は一人ふなばたに立ち、大声で竜神を怒鳴りつけます。
そのせいか嵐は静まり、無事に伊豆国に着くことができました。
文覚上人の話が続きます。平家物語終盤では平家の忘れ形見、六代を助け、人情に厚い面を見せる
文覚です。ここでの行動もすごく熱いです。熱い男です。
平家物語には鬱々と、人生を思いつめたような人物が多いですが、その中で
文覚上人の破天荒な熱さは、ひときわ気持ちがいいです。
神護寺再興のために陳情にきたはずが、大騒動になってしまいます。
もう少しTPOをわきまえて遠まわしに頼めばいいのに…、いくらなんでもそんな無礼なやり方では…、
そんなつまらない正論を押しのけるように、文覚上人は、ガーーッと暴れるのです。
しかも、かかってきた警護の武士に対して、「文覚喜んで飛んでかかる」…ケンカを喜んでいます(笑)
人間の魅力というものは、好感というものは、かならずしもクレバーで理にかなった行動の中
にあるのでなく、むしろ欠点やスキの間ににじみ出すものだなあと思いつつ朗読しました。
朗読のキモは、役人に偉そうに代筆させるところや竜神を怒鳴りつけるところでしょう。
ほぼ一年ぶりに再録したのです。やはり文覚の台詞は気持ちいいです。