慈心房

平家物語巻第六より「慈心房(じしんぼう)」です。
慈心房という坊さんが冥界に行って清盛が慈恵僧正の生まれ変わりだという話をききます。

平家物語:慈心房 朗読mp3

あらすじ

また清盛公は慈恵僧正の生まれ変わりとも言う人もありました。

その次第はこうです。
慈心房尊恵という長年法華経を所持し書写していた僧がおりました。
この慈心房がある晩仏前で法華経を読んでいると、夢のうちに閻魔王宮からの使者が 現れ、近く法華経の転読供養をするので参勤せよと言い渡します。

慈心房はこの夢を恐れ、ひたすら阿弥陀仏を唱えていました。

後日また夢の中に使者が現れ、慈心房に参詣をうながします。

袈裟も鉢も無いと思う所にどこからか袈裟があらわれ慈心房の肩にかかり、空から 金色の鉢が下りて来ます。

慈心房は喜んで迎えの車に乗り、空を駆けて閻魔王宮へ向かいます。

閻魔王宮は外壁も内側も広々しており、中には大極殿(メインの宮殿)が建っています。
法会を終えた慈心房は「後世のことを尋ねよう」と、閻魔大王のおられる大極殿を訪ねます。

閻魔大王は汝は法華経転読の功徳によって弥勒菩薩の浄土に至るだろうと語り、 宝蔵から文箱を持ってこさせます。
中の文には慈心房の善行や人々を教化したことがいちいち書かれていました。
慈心房は感嘆し尋ねます。
「どうか解脱の方法を教えてください。悟りに至る道を示してください」
閻魔大王は梵語の経文を唱えます。

妻子王位財眷属   死去無一来相親
常隋業鬼繋縛我  受苦叫喚無邊際
(妻子も王位も財産も従者も、死んでしまえば何ひとつ従ってはこない。
ただ生前の罪の鬼だけがつきまとい、身を縛り、どこまでも苦しみ叫ばせる)

慈心房は喜び、平相国清盛の話題を出します。
閻魔大王は、「清盛は只人ではない。慈恵僧正の生まれ変わりだ」と言い、 慈心房に文を授けます。

敬禮慈慧大僧正   天台仏法擁護者
示現最初将軍身   悪業衆生同利益
(慈慧大僧正を敬って申し上げます。貴方は天台の仏法の擁護者。
最初は将軍として世に現れ、悪行が恐ろしい結果を招くことを我が身を持って 人々に示し、結果人々を良い方向に導いたのです)

その後慈心房は都へ上り、この夢のことを清盛に告げます。
清盛はおおいに喜び、慈心房をもてなしました。

朗読について

平家物語の中では、かなりファンタジー色の高い話です。空を駆ける車に乗ってエンマ大王の 王宮へ行ったり、空から袈裟と鉢が現れたり、愉快です。

風邪が治った直後に朗読したので、さらに喜びは大きかったのです。

慈心房はなかなかキモが座ってるというか、最初はビクついてるのにいざ冥界に着くと エンマ大王を普通に訪ねたり恐怖心が麻痺してます。いい感じです。
すごく夢っぽいです。

ただ言葉が難解で、朗読とゆうか調べるのが大変でした。
(気真面目なので、言葉の一つ一つをよく調べないと気になって朗読できない)
ややこしい仏教用語の連打には参りました。

過去、いろいろな創作物の中でエンマ大王に会ってきましたが(古くはまんが日本昔話など) このエンマさんくらい言葉が難解なエンマさんはいませんでした!

今日ではほとんど参照されることも、まして朗読されることはない章でしょう。
「慈心房」で検索する人なんか、月に10人もおらんでしょう。
まるでアクセスアップには繋がらないことです。
しかし、敢えてそれに取り組む自分は何てカッコいいんだと思いつつ朗読しました。


posted by 左大臣光永 | 平家凋落
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