平家物語巻第五より「物怪(もっけ)」です。
清盛の身の回りに、不気味な事件が次々と起こります。
あらすじ
平家が都を福原に移してから、不気味な事件が頻発します。
清盛の寝ているところに巨大な首が現れます。
岡の御所というところでは大木が倒れるような音とともに
二三十人が笑うような声が虚空に響きます。
また、ある朝清盛が庭の内を見ると沢山の髑髏が庭を満たしていました。
見る間に多くの髑髏どもがひとつに固まって、山のような巨大髑髏となって清盛をにらみ付けます。
清盛がにらみ返すと、跡形もなく消えてしまいました。
清盛が大事にしていた馬の尾に、一夜にして鼠が巣をつくり、子を産みました。
また、源中納言雅頼卿(げんちゅうなごん・がらいのきょう)の元に使える青侍の見た夢も、
不気味なものでした。
内裏の神祇官かと思われる場所で神々が会議をしている夢で、
末座に座っていた厳島大明神(平家の守り神)が退場を命じられ、
座上に座っていた八幡大菩薩(源氏の守り神)が、「平家に預けてあった節刀(朝敵征伐の際、天皇が将軍に与える刀)を頼朝に与える」と言い、
春日大明神が「その次はわが子孫へ」と言うという夢です。
清盛はこの夢の噂を聞きつけて、雅頼卿の元に使者を送ります。
青侍はまずいと思い蒸発してしまいました。
最も不思議なのは、清盛が昔、厳島大明神から賜った小長刀が、にわかに消えうせたことです。
平家の世も末になったと人々は噂しあいました。
朗読について
平家物語には、「鵺」とか、「入道逝去」の中で地獄の使い、牛頭馬頭(ごずめず)が
登場したり、妖怪変化の描写がけっこうあります。
また、「夢のお告げ」に関する話も多く、不思議な雰囲気出してます。
戦争ばっかりしてる話じゃないんです。
怪談めいた話ですから、それっぽく読むのがいいでしょう。
不気味な読み方というのは難しいもので、あんまり
「不気味にしよう」という色気が前面に出ると、わざとらしくなります。
地味に、ジワーと不気味さがわいてくる。そのバランスだと思います。
怪談をうまく語れれば夏の合宿で人気者です。練習する価値は十分にあります。
子供の頃、カセットに怪談を録音して、自分ではすごく不気味に朗読したつもりなのに
再生してみたら余りのわざとらしさに爆笑してしまいました。いい思い出です。