平家物語巻第六より「葵前(あおいのまえ)」です。
高倉天皇と、葵の前の忍ぶ恋です。
「紅葉」「小督」と並んで、高倉上皇追悼話群のひとつです
あらすじ
建礼門院に使えている女房の女童が、高倉天皇から愛されたことがありました。
人々は、「この人は今に后に立つに違いない」と噂し、「葵女御(あおいのにょうご)」と呼びました。
高倉天皇は、人の口をはばかり、その後はお召しになりませんでした。
関白藤原基房は、葵の前の身分の卑しいことが問題なら自分の猶子(養子)にしましょうと提案しますが、
高倉天皇はそれを退けます。
高倉天皇は、自分の気持ちを古歌に託されます。
忍ぶれど 色に出でにけり わが恋は 物や思ふと人の問うまで
(心の底に隠そうとしても、恋する気持ちは現れてしまうものだなあ。「何か心配でもあるのですか」と、
人が聞いてくるほどに)
冷泉少将隆房が取り次いでこの紙を葵の前に渡すと、葵の前は里へ帰り、つもる思いの激しさでしょうか、
ついに死んでしまいます。
「君が一日の恩のために、妾が百年の身をあやまつ(主君の一時の寵愛を受けたため、女性が
身を誤った)」とは、まさにこのことでした。
昔、唐の太宗がある娘を後宮に入れようとしたところ、名臣の魏徴に諌められて
思いとどまったことを思わせる話でした。
朗読について
高倉天皇と葵の前の悲恋です。
葵の前は身分の低い女だったため、こういった悲劇が発生したわけです。
淡々としたテンポで朗読しました。
高倉天皇が引用しているのは、百人一首にもとられている、平兼盛の歌です。
内容的にはわかりやすく、誰でも共感できるのではないでしょうか。
平家物語には、このように和歌や中国の古典からの引用が非常に多いです。
大雑把にでも調べてから朗読すれば、情がこもると思います。