平家物語巻第一より「吾身栄花(わがみの えいが)」です。
清盛の子供たちも男子は重要な官職につき、女子は良家に嫁ぎ、平家一門、大変に繁盛しました。
あらすじ
栄華を極めたのは清盛本人だけではありません。
清盛の嫡子重盛が内大臣の左大将(*補)、次男宗盛は中納言の右大将になったのを始めとして
平家一門は公卿十六人、殿上人三十余人、諸国の受領・衛府・諸司六十余人を輩出し、
大変な繁盛ぶりでした。
兄弟で左右の近衛大将を独占した先例は、過去四回だけでした。
それも摂政関白の子息に限ったことで、平家は異例のことでした。
八人の娘たちも、后に立って皇子を産んだ建礼門院をはじめ、それぞれ良家に嫁ぎ、
幸福なことでした。
その中の一人は、桜町の中納言成範卿(さくらまちのちゅうなごん しげのりのきょう)(*補)に嫁ぐ
予定でしたが、平治の乱以後引きちがえられ、大納言藤原兼雅に嫁ぎました。
この桜町の中納言成範卿には逸話があります。
風流な人で、吉野山の桜を恋い、区画の中に桜を植え並べて住んでいました。
人は「桜町の中納言」と呼びました。
桜が散るのを惜しみ、神に祈り、普通七日で散るところを二十一日まで長らえさせました。
平家の治める国は日本の半分の三十余国に及び、その勢いは天皇も上皇もかなわないほどでした。
■ 補足 ■
近衛大将
律令制における官職の一つ。令外の官。
近衛府の長官。近衛左大将と近衛右大将各一名が任命された。
宮中で天皇や皇族の警護などをした。
大臣と兼任することが多かった。
「嫡子重盛内大臣の左大将」という表現は、「内大臣と左大将を兼任した」ということ。
桜町中納言成範卿
「吾身栄花」の流れとあまり関係なくいきなり挿入される桜町中納言の話ですが、
何か深い意図があるのかもしれないです。
この桜町中納言のくだりは、平家琵琶を習う時に最初に教わるのだそうです。
能「泰山府君(たいさんぷくん)」に、この桜町中納言が登場します。
「泰山府君」とは、桜を長らえさせるため成範卿が祈った神の名前です。
朗読について
平家物語は悲惨な話が多く、「無残なれ」とか「あはれなれ」とかばっかり言ってますが、
この「吾身栄花(我身栄華)」は没落する以前の平家の繁盛を語るところで、非常にめでたい言葉で綴られています。
「平家が栄えましたよ」と、それだけの内容なのに、これほど執拗に、しつこく、具体的に
滔々と語る琵琶法師の語り口も聞こえてきそうな、めでたい箇所です。
私は朗読する時の勢いとして、
ガーッと攻めの姿勢で朗読するぜ!
↓
いや、これはうるさい。朗読は聞き手を意識して、しみじみ語るものだ
↓
しばらく声を抑える
↓
なんだこのイジケた声は!カスだ!
↓
最初に戻る
というプロセスを繰り返すのですが、これは何周目かで最初に戻ったあたりです。