平家物語巻第三より「有王(ありおう)」です。
俊寛の童有王が、鬼界ケ島に一人残された俊寛を訪ねて海を渡ります。
「足摺」の後日談的な話です。
あらすじ
俊寛僧都が大事にしていた、有王という童がいました。
鬼界が島の流人が恩赦で都に帰ってくると聞き、有王は鳥羽へ向かいますが、俊寛の姿がありません。
人に聞くと、三人のうち俊寛だけは罪の深さゆえ、赦されなかったとのこと。
有王は鬼界が島に赴くことを決意します。俊寛の姫君の元へ行き、文を預かって、商船に便乗して、途中衣服を剥ぎ取られなどしつつも、鬼界が島にたどり着きます。
そこは田畑も村もなく、言葉も通じない所でした。
有王は島の者に俊寛のことを聞きますが、知っている者は誰もいません。
ある朝、有王は海辺で一人の乞食を見かけます。元は法師のようですが、ボロボロの酷い格好です。
有王がその乞食に俊寛のことを尋ねると、乞食は「我こそその俊寛よ」と言って、バッタリと倒れ、気を失います。
しばらくして意識を取り戻した俊寛は、有王に島での生活の苦労を語り、棲家としているあばら屋へ招きます。
かつて法勝寺の寺務職として多くの従者を従えていた人の住まいとは思えない、
それはひどいあばら屋でした。
朗読について
登場人物は有王と俊寛のみですから、演じわけも容易で、朗読しやすい章です。
俊寛が有王に切々と語る、島での苦労話。その長い台詞が朗読のキモでしょう。
俊寛の台詞は、対句が多様され、リズムがあり、まるで詩のように豊かな旋律を持っています。
俊寛というと傲慢で性格の荒いイメージがありますが、こういう台詞を見ると、
感性の豊かな、自然の美しさや人の心に敏感な側面も感じます。
それにしても、語られている内容は悲痛です。
日の長閑なる時は、磯に出でて、網人釣人に手をすり、膝をかがめて、魚をもらい、
潮干の時は貝を拾い、荒海布を取り、磯の苔に露の命をかけてこそ、憂きながら今日までは
ながらえたれ