平家物語巻第四より「鵼(ぬえ)」です。
源頼政の鵺退治です。
あらすじ
源三位入道頼政(げんさんみにゅうどう よりまさ)は、以仁王の反乱に加担して敗れます (「橋合戦」、「宮御最期」)
この頼政は保元の乱でも平治の乱でも平家方に味方しましたが、大した恩賞に預かれず、 老齢になってから述懐の和歌を詠み、それが評価されてやっと三位に上ることができたのでした。
この頼政の武人として目覚ましい活躍は、鵺退治です。
仁平の頃、夜な夜な御殿の上を妖しい黒雲が覆って、帝を怯えさせるということがありました。
これによって公卿詮議が行われ、昔源義家が帝を守った先例に基づき、 武士に警護させよという話になり、頼政が選ばれます。
頼政は郎党の猪早太(いのはやた)と共に、怪物を退治します。
その死体を見ると、頭は猿、胴は狸、尾は蛇、手足は虎という恐ろしい姿でした。
恩賞に預かる際、取り次いだ左大臣が
ほととぎす名をも雲井に上ぐるかな
と上の句を詠むと、頼政は咄嗟に
弓張月の射るにまかせて
と下の句をつけて、武人としてだけでなく歌人としても優れていることを世に示しました。
また、應保の頃、鵺という怪鳥が夜な夜な鳴いて、帝を悩ましていました。
例によって頼政が召しだされます。
しかし、真っ暗で敵の居場所がわかりません。
頼政はまず一の矢を射て、それに驚いた鵺の羽音を聞き、その音めがけて二の矢を放ち、 見事に鵺を退治するのでした。
その後伊豆国を賜り、子々孫々に至るまでの繁盛を約束されていた人だったのに、謀反に加担してその未来を絶ってしまったのです。
朗読について
さっそうと朗読するよう気をつけました。
頼政は不幸な人です。最期の和歌はもう、不幸の極みです。
埋もれ木の 花咲くことも無かりしに みのなる果てぞ 悲しかりける
(土に埋もれ、花を咲かせることもなく、我が身(実)は日の目を見ることも無く落ちぶれ果てて
いくのだ。悲しいことだなぁ)
長年ふりつもった、鬱憤がにじみ出ています。
こんな歌で締めくくる一生は、本当に不幸だと思います。
三位という高い位にのぼり、子供たちも官職に預かり、おとなしくしていれば平穏無事な
一生を終えられたはずの人です。
それなのに、そうとう不幸です。「長年評価されなかった」「周りはどんどん出世していくのに…」
そういう、ドロドロしたものが渦巻いていたのでしょうか…。
「鵺」では、頼政のドロドロしたところは避けて、さっそうとした面を描こうとしているように
感じます。
そこに注意して朗読しました。
三井寺炎上 >>