平家物語巻第四より「宮御最期(みやの ごさいご)」です。
打倒平家のために立ち上がった源三位入道頼政(げんさんみにゅうどう よりまさ)は、
無念にも自害し、以仁王も討たれます。
平家物語:宮御最期(二) 朗読mp3
あらすじ
宇治川を真っ先に渡った足利又太郎忠綱は、三位入道の方へ向け、勇ましく名乗りを上げ、平等院の中へ攻め込みます。
これを見て大将軍知盛は一気に川を渡せと指示。二万八千余騎が宇治川を渡ります。
平等院では源三位入道の一族や三井寺の大衆が、宮(以仁王)を南都へ逃す
時間稼ぎのため平家の攻撃を防いでいました。
源三位入道は、子息の兼綱、仲綱、養子の仲家を失い、自身も痛手を負い、自害を決意します。
埋もれ木の花咲くことも無かりしにみのなる果てぞ悲しかりける
(土に埋れ、一度も花を咲かせることなく朽ちていく、この身(実)のなんと悲しいことよ)
という悲痛な歌を残し、郎党の渡辺長七唱(わたなべの ちょうじつ となう)に介錯させます。
宗盛がどうあっても生捕りにしろと命じていた競瀧口は、散々に戦い、自害しました。
以仁王は南都へ逃げていく所を平家方に追いつかれ、首を取られます。
家来たちは散々に戦い討死しますが、乳母子の宗信だけは、臆病で池に飛び込んで隠れてしました。
しばらくして以仁王の首の無い死体が運ばれていくのを目撃しますが、怖くてただ震えるばかりでした。
南都から七千余人が宮の迎えに来ていましたが、既に以仁王が討たれたという知らせが届き、涙をのんで奈良へ帰りました。
朗読について
朗読すると、確実にへこみます。
平家物語の中でも、かなり重苦しい章です。
前章「橋合戦」とまるで違い、陰鬱なトーンです。
特に頼政の辞世の句は、辛いです。
埋もれ木の花咲くことも無かりしにみのなる果てぞ悲しかりける
子息たちも討ち取られ、未来に続くものが何もなくなり…
完全に負け犬な、悔やみばかりの男の述懐です…。
せめて頼政さんの魂があの世で救済されてほしいと思いつつ朗読しました。
平家物語は、朗読向きのテンポいい文章が多い反面、
内容はこうした重苦しいのが多いです。
あまり感情移入すると死にたくなるので注意が必要です。
「橋合戦」「宮御最期」のセットは何度も朗読し、編集していますが、戦場での掛け声が
なかなかカッコよく決まりません(冒頭の又太郎の名乗りなど)
やたら声を張り上げればいいという考えで失敗したことも多々あり、もう少し情感をこめつつ、
言葉もつっかからないで、ベストな朗読に近づけるべく今後も精進します。