南都牒状

平家物語巻第四より「南都牒状(なんとちょうじょう)」です。
三井寺では高倉宮をむかえて平家と合戦するにあたり、比叡山延暦寺と奈良興福寺に協力をもとめました。しかし比叡山はこれに「未定」と答えました。一方、興福寺は…

平家物語:南都牒状 朗読mp3

あらすじ

クーデターを事前に察知された以仁王は、三井寺へ保護を求めます(「」)。 三井寺は長年の仇敵、比叡山に協力を要請します(「山門牒状」)。

その書状を読んで、比叡山の大衆は怒ります。
三井寺はもともと比叡山から分かれた寺であり、比叡山から見れば、格下にあたるはず。
それを対等のように表現しているのがけしからん、というのです。

また、清盛は天台座主明雲に働きかけ、比叡山の動きを抑えさせていました。
こうしたことから比叡山は三井寺にあてて「味方するかどうか未定だ」と返事を送りました。
さらに清盛は比叡山の宿々に米と絹を引き出物として配り、味方につけるべく工作します。
この様子を見て、何者かが皮肉って落書しました。

山法師 おりのべ衣 うすくして 恥をばえこそ かくさざりけれ
(意味)比叡山の法師たちが争って手に入れた織延絹で作った衣は薄地なので、衣の下にある いやらしい本性を隠すことができなかったよ

絹にありつけなかった法師は、
おりのべを 一きれもえぬ われらさへ うすはぢをかく かずに入るかな
(意味)織延絹を一きれも貰えなかった我らまで、薄恥をかいた数に入れられてしまったぞ

また、三井寺は興福寺にも協力を要請します。

衆徒一同以仁王の引渡し要求に従うつもりはなく、仏敵清盛と戦う覚悟であること、
また、関白藤原基房が清盛によって流罪に処せられたが、興福寺は藤原氏の氏寺であり、 いっそう清盛に恨み深いといえるではないか…と。

興福寺は三井寺の要請を受諾し、書状を送ります。

天台宗と法相宗は別の宗義を立ててはいるが、共に釈迦の弟子である

清盛はもと卑しい家柄。
それがたまたま成り上がり、今では権力のままに 後白河法皇を鳥羽殿へ幽閉し、関白藤原基房を流罪に処するに至っている。
興福寺でも心苦しく思っていたところに、この以仁王の一件である。
命がけで以仁王を守り清盛と戦おうということ覚悟を聞き、喜んでいる。
唐の武宗が仏教を弾圧した時、清涼山の僧らが命がけで仏法を守ったように、興福寺も延暦寺も 協力しないことがあろうか。
出発の連絡をお待ちください…と。

朗読について

清盛をコテンパンにケナす、興福寺の書状。気持ちいいです。
文面を見ると難しい漢字ばっかりで頭がクラクラしますが、とにかく朗読してみてください。
最高に気持ちいいです。
よくまぁこんだけ言葉豊かに悪口が出てくるなーと感心しつつ朗読しました。

意味のわからない仏教用語だらけですが、細かな語句の意味よりも、ガーーッと まくし立てる高揚感を大切にしたいです。

こういうところこそ、マイクに声を叩きこむように腹の底から朗読せねばなりません。 責めねば。朗読というと暗ーーい声でボソボソいってるイメージありますが、それじゃアカンです。

実家の座敷で朗読しました。激しい声が出せて、興奮しました。
田舎とはいえ、時々車が通り、その音をマイクが拾わんとするところを、負けじと 怒鳴りまくりました。

時々声がかすみ、音がクリップし、しかも部屋鳴りを拾いまくってますが、むしろその雑さが勢いです。
イジケた声が一番いかんのです。

平家物語に出てくる書状は、朗読して気持ちいいものばかりです。
勧進帳」「木曽山門牒状」など、大変ストレス解消になります。


posted by 左大臣光永 | 平家凋落
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